国宝
原作/吉田 修一(よしだ しゅういち)
悪人、怒り、などが多くの作品が映像化されている。
監督/李 相日(リ・サンイル / り そうじつ)
フラガール(06)、悪人(10)、怒り(16)、流浪の月(22)
脚本/奥寺佐渡子
時をかける少女(06)、サマーウォーズ(09)、おおかみこどもの雨と雪(12)
八日目の蝉(11)、グッド・バイ~嘘から始まる人生喜劇~(20)
出演/吉沢亮
横浜流星
高畑充希
寺島しのぶ
森七菜
三浦貴大
見上愛
永瀬正敏
嶋田久作
中村鴈治郎
田中泯
渡辺謙
後に国の宝となる男は、任侠の一門に生まれた。
この世ならざる美しい顔をもつ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、
上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む。
そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と出会う。
正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人。
ライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、多くの出会いと別れが、運命の歯車を大きく狂わせてゆく…。
誰も見たことのない禁断の「歌舞伎」の世界。
血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切り。
もがき苦しむ壮絶な人生の先にある“感涙”と“熱狂”。
何のために芸の世界にしがみつき、激動の時代を生きながら、世界でただ一人の存在“国宝”へと駆けあがるのか?
圧巻のクライマックスが、観る者全ての魂を震わせる―― 。
吉沢亮の演技にただただ 圧巻
最初の小一時間は少年期時代の物語 なので 吉沢亮は出てこないが この時に担当した子役俳優の黒川想矢が頑張っている
そして成長したのが吉沢亮なのだが吉沢亮と横浜流星 の演技 合戦には脱帽でしかない
主人公が「曽根崎心中」を、半次郎(渡辺謙)の代役で行い そして高く評価され栄華を極めるとともに、俊介(横浜流星)が失踪してしまう
そこから歌舞伎役者として栄光の道に進むと思いきや、 自らが招いたこれまでの行動により 凋落していってしまう。
このあたりの人生の栄光と挫折に至る流れの演技が素晴らしい。
その後ドサ回りで演技をし続け、演技力を磨き続けた俊介(横浜流星)が再びストップスポットライトを浴び そして 歌舞伎会でニューヒーローのように扱われ始めたときの挫折感を表すシーンは見入ってしまう。
もう一人の主人公の横浜流星もすごい
歌舞伎界のボンボンとして、稽古では厳しいもののプライベートでは甘やかされてきたお坊ちゃん感が見事。これは「アキラとあきら」のときでもそうだったのだが、いいとこの坊っちゃんらしい甘っちょろい考えながらもなんだかんだ一流のしつけをされている人間の雰囲気が見事なのだ。
そして挫折からの復活における、甘さの消えた青年としての目の演技。
そもそも最初の大きな挫折。父親の代役で選ばれなかった際の、橋の上でのシーンもすごい
喜久雄(吉沢亮)に、
怒ってもいない、恨んでもない。
といった会話をし肩をポンっと叩いて離れる瞬間に、妬み全開の表情を一瞬
ほんの一瞬だけいれるあのシーンは身震いをするほどだ
この2人の人生が分かれ再び 1本にもなったにあたりから最後にかけての怒涛のテンポのよさも見事。そのため観てる側は3時間という長時間を感じることなく最後までスクリーンに釘付けにされる
女優陣も素晴らしい
まず母親の役として寺島しのぶがキャスティングされているが、あまりにも適役すぎる…というかもう まさにここは 寺島しのぶ しか 演じられないような部分だろう
歌舞伎の家系に生まれ実際に見てきているものを見事に体現してくれたとも言える。
そして若手の高畑充希、森七菜、見上愛が主人公2人を支える女性を演じているが、出すぎず、でも要所要所で存在感を存分に見せてくれる。
約3時間の上映時間となる映画だが 見所は随所に繰り広げられる歌舞伎シーンと言っても間違いないだろう
そして華やかの表舞台の裏側で役者が抱える苦悩や苦しみ そして不安 そういった感情の全てが主人公2人の演技によって見ていることもちろん 心がつまされるほどの緊迫感に満ち満ちているのだ
吉沢亮 は25年の日本アカデミー賞で主演男優賞を取ると思われるし、この作品がアカデミー賞受賞と言われても納得できるほどのクオリティ
それほどまでに 芸術性とエンターテイメント性の融合が完璧と言っていいほどの素晴らしさであるので
一見 非常にハードルが高い映画ではあるが蓋を開けてみると極上の ヒューマン ドラマであり そして 演じる俳優 今回は 歌舞伎役者が抱える苦悩 といったもの そして 時代とともに移り変わる興行スタイルの変化というものも含めてきちんと描かれているのは興味深い
また劇中での歌舞伎もその多くが名前を知られる有名作…というのも素晴らしいチョイス
「連獅子」「二人藤娘(ににんふじむすめ)」「二人道成寺(ニニンドウジョウジ)」
「曽根崎心中」「鷺娘(さぎむすめ)」
などである。
これらの おおよその話のストーリー をちょっとだけでもいいので知っていれば、劇中内で演じる歌舞伎の役どころが判り、吉沢亮や横浜流星の演技力の高さをより感じられるものになっている
そして歌舞伎の演目で演奏される音楽だが、実際に歌舞伎の舞台で演奏されている方々が出演しており、音楽も本物。
そして何より驚いたのは 衣装も全てが実際に歌舞伎を上映しているが出かけている 松竹歌舞伎座 が全面的に協力したと思われるところ
この作品の配給は松竹 ではない。東宝が行っている。
そこに松竹歌舞伎が衣装において全面的に協力しているということもあって歌舞伎シーンのリアリティは完璧とも言える完成度に昇華していると言える。
吉沢亮と横浜流星 の演技力の素晴らしさに加えて様々な小物 そして 着物や音楽の本物が協力することによって 格段とクオリティがあり 見応えのあるものに仕上がっている
原作で描かれていたが大きく変われた部分も 要所で見受けられる
特に喜久雄を陰ながら支えてきた第二の父親とも言うべき人の存在が映画ではすっぽり抜け落としているが 違和感を感じることはない素晴らしい改変。
吉沢亮 はこの夏 コメディー とも言われる 「ババンババンバンパイア」などにも出演しているが彼の演技力の深さ 凄さ 怖さ これはこの映画を1本見るだけでわかる。
吉沢亮と横浜流星が今後日本映画を背負ってたつ俳優のたちであることを明確に感じられるだろう。
非常に難しいと思われがちな歌舞伎を題材にし 歌舞伎の世界を描いた映画ではあるが まさに 芸事を知るという意味でも大きな教本にもなる映画である
2025年を代表する一作 と言っても過言ではないので、ぜひ劇場で見ていただきたい