『木更津キャッツアイ』(きさらづキャッツアイ)は、2002年1月18日から3月15日までTBS系の「金曜ドラマ」枠(毎週金曜日22:00 – 22:54、JST)で放送された日本のテレビドラマ。脚本は宮藤官九郎。主演は岡田准一。
後に2度映画化された。映画については別項で詳述。
→2003年に公開された映画については「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」を参照
→2006年に公開された映画については「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」を参照
概要
ドラマ内容
千葉県木更津市を舞台に、高校時代のクラスメートで同じ野球部所属だった5人組が、昼は草野球チーム「木更津キャッツ」でのプレーや地元遊びに興じ、夜は怪盗団「木更津キャッツアイ」として珍騒動を巻き起こす。
本作は1話を野球の試合になぞらえており、表と裏の二部構成になっている。メインストーリーの裏で何が起きていたのかを巻き戻して説明したり、哀川翔や氣志團などを実名の役で登場させたり、30pプログレッシブカメラを使用したりする(当時通常のテレビドラマでは60iインターレースカメラが使用されていたが、30pプログレッシブカメラによって映画に近い質感になった)などさまざまな工夫を凝らした。撮影は実際に木更津市で行われており、ドラマファンがロケ地を訪れるようになった。
全放送回の平均視聴率は10.1 %であったが、深夜の再放送の方が視聴率が良かった。DVD販売数はテレビドラマとしては異例の50万セット超を記録し、これが後の映画化に繋がった。
背景
1997年に東京湾アクアラインが開通し、都内まで1時間30分程度を要していた木更津市は川崎市と十数分で結ばれることになった。しかしながら、普通車で通常3,000円(開通時は4,000円)という高額な通行料が妨げとなり、首都圏のベッドタウンとなるという行政の思惑は外れ、他方、休日の買い物客は京浜地区に流出し、木更津駅前の商店街の衰退を招くという皮肉な結果となった(ストロー効果)[1]。ドラマには評論家の大塚英志が「木更津現象」とも呼ぶ、大都会周縁部の“田舎”で暮らす、あるいは暮らすしかない若者たちの鬱屈した思い、やるせない気分が込められている。
ドラマの登場人物でいえば、主人公のぶっさんは21歳に至るまで木更津を一歩も出たことがなく、モー子は第4回にして初めて渋谷を訪れている。一方で、アニの弟・純や中学時代の同級生・リトル山田ら素質のある者は“陸の孤島”木更津を抜け出てプロ野球選手となる。またキャッツアイのメンバーで唯一の大学生・バンビは都内の大学に通っている(後に地元エリートとして木更津市役所に就職する。)。このように学業やスポーツの才ある者は次々と都内へ流出していく中で、停滞・衰退する木更津に取り残された、時にヤンキーとも呼ばれる凡庸な若者たちの劣等感と地元愛、都会へのひそかなあこがれと反発、数少ない風俗店や周囲の異性は幼なじみや顔見知り、誰かの元恋人ばかりという限定状況ゆえに発散しきれない性欲、義侠心と背徳心がちりばめられた、無意味な方言交じりの会話がドラマの魅力となっている。
登場人物たちの泥臭い人物像、会話、エピソードを、都会の視聴者は未知の“おかしみ”と取り、大都会周縁部および地方の視聴者は既知の親近感あるいは一種自虐的な懐旧感を覚えたのが、ドラマヒットの一因と思われる。この種のヒット図式はドラマに先行する氣志團と似ており、“大いなる田舎”宮城出身で脚本家の宮藤の面目躍如たる秀作となっている。