片思い世界
監督/土井 裕泰
罪の声(20)
花束みたいな恋をした(21)
脚本/坂元 裕二
花束みたいな恋をした(21)
ファーストキス 1ST KISS(25)
出演/
広瀬すず
杉咲花
清原果耶
横浜流星
小野 花梨
moonriders
田口トモロヲ
西田尚美
今の邦画のなかで名前だけで客を呼べる監督と脚本家が
花束みたいな恋をした(21)以降再びタッグを組んだことでも話題の1本
予告編が公開されたときに感じたのは主演の3人の女優の演技の良さ。
70秒という短い時間ながらも
「コレは観ておきたい」
と思わせてくれるものだった…が、それ以上に予告の上手さがあったのも事実。
物語
東京の片隅に立つ古い一軒家で暮らしている
美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)の3人。
さくらの20歳の誕生日を祝うサプライズもクールなさくらには暖簾に腕押し。でもさくらは美咲と優花に感謝の手紙を送る逆サプライズを用意していた。
3人はそれぞれ仕事、大学、アルバイトにせいを出している毎日のなか、美咲にはちょっと気になる、片思いをしている男性がいることが判り告白をけしかける優花とさくらだが、美咲はかたくなに告白はしないと口にする。
そんな優花とさくらにもそれぞれが持つ一方通行の思いがあるのだが……
まず個人的に予告編から感じていたのは
「この作品は実はファンタジー作品なのではないだろうか?」
というものだった
それは実質体には正解だったし、いい意味で外れていました
まず主演の3人の演技力の高さから、3人が過ごす日常のシーンがなんともエモい!
3人ともが 社会で働き、学校で授業を受け、水族館でアルバイトをしている。
食事は元気モリモリで食べて日曜日は洗濯物を干して3人で折りたたみ、
ホラー映画を観て3人のそれぞれの性格の違いあるリアクションを見せてくれる
それがとても自然すぎる……というか、
日常でも広瀬すずも、杉咲花も、清原果耶もこういう反応をしているのではないか?
と思ってしまうほどの自然に溢れている。
それぞれが思う相手への片思いは違っているものの、共通しているのは愛。
愛情を、思いを伝える方法が無いからこその切なさなどはさらりと描かれているものの、3人の演技力の高さによって共感してしまうほどの熱量を持っている。
その一方で予告や公式サイトでは全く語られていなかった「重要な要素」「設定」を素直に受け入れられるかどうかでこの作品の評価は分かれると思う。
その部分は映画の前半でさらりと描かれているし、冒頭から日常を描いているシーンが続くが、どこか違和感ある演出になっているので映画慣れしている人はすぐに気づくだろう。
個人的には
「なるほど そういう設定なのね」
と素直に受取り受け入れたので、この映画はものすごく楽しめた。
でも細かな部分を気にする人はそこをツッコミを入れると思う。
移動に関しても、物理的な物質保存にしても、詳細な部分まで設定を気にする人は、それで楽しめないのは逆にもったいないと思うのが個人的な意見
そしてサブとしてポイントが高いのが、広瀬すず演じる美咲が片思いをする典真(てんま)を演じた横浜流星
冒頭から出演しまくっているのに、まったく横浜流星感がない
完全にオーラも消して、心に傷を持つ青年役を演じている。
彼の気を引こうとしている桜田奈那子(小野花梨)のアプローチにも全く動じず、流されない様子は、典真がもつ自己嫌悪の深さを感じさせてくれる。
その彼がラスト前に、とある物を見つけて声に出して語るシーンからの演技がすごい。
沈黙から動 というシンプルな展開ではあるが、12年間の思いが一気に溢れ出すシーンからの流れは涙するシーンでもある
そしてピアノの伴奏とカット割りで見せる広瀬すずとの合奏
ベタと言えばベタすぎる展開であり演出ながらも、この映画の全てがここに集約されていると感じた演出。
号泣、感涙…という作品ではないが、この作品で描きたかった本質の部分はとても胸うつもの…と感じました。
ここからは完全にネタバレ
この映画は亡くなった人への思いの大切さを描いたともいえる作品。
大切な人を亡くした人は、いつまでも立ち止まり、後ろを向くのではなく、前を向いて進むことの大切さ。思い出を大切にすることの尊さを感じました。
そして亡くなった人を忘れないこと、大切にするのは
アメリカのネイティブアメリカンのカチーナと同じ思想かな?とも思った。
カチーナは
亡くなった人は天に登り、雲となり、恵みの雨を降らせる
というもの(諸説あり)ですが、亡くなった人への思いをプラスに添加させることで亡くなった人も笑顔になれる…とも思ったりしました。
前半にも言いましたがこの映画の設定部分で賛否は出ると思いますが、個人的にはいい作品だと思います